鴬城に松、竹、梅と三人揃って美しい姫がいた。姉娘の松姫は強情っぱりで、将軍お声がかかりの婿君候補新七郎とのお見合にどうやら顔を出しそうもない。この縁談を断ってはお家取つぶしにあうかも知れぬと、城主や家老らは相談の上、病気を口実に姫を城の裏の尼寺に隠すことにした。姫に附けて剣の達人彦四郎と腰元八重を派遣し、彼らにラヴ・シーンを姫の前で実演させることにした。かたくなな姫がこれで春にめざめるかも知れぬというわけだ。彦四郎は若いくせに長虫と女が大嫌いという堅物で、彼を慕う家老の娘小百合に鼻もひっかけぬほどであった。--お城入りした新七郎君は、これは生れついての色好み、妹の竹、梅両姫に盛んにウィンクして上機嫌である。ここで、お家を狙う次席家老尾形一味が現れ、新七郎君と松姫を会わせて、縁談をぶちこわそうとする。--尼寺では、尼たちに騒がれながら、彦四郎は八重と熱々の態を演じ、その効果は相当に松姫に現れた。が、彼女は忍びこんだ黒装束一味にさらわれてしまう。姫を遠くの温泉場で奪い返した彦四郎は、その一味に親友沢野が加わっているのを知った。その温泉場で、姫はお時というお茶目女中から恋の手管を伝授され、彦四郎に焦がれ始める。彦四郎は釣りに行ったとき、一味から斬られた沢野を救った。沢野はむろん改心する。--新七郎君はやっと腰を上げ、城を発つことになった。その帰途を尾形一味が襲うことを沢野から知らされ、彦四郎は彼を離さぬ松姫を残して馬を飛ばした。悪人一味が新七郎の駕篭を取りまいたとき、中から出てきたのは彦四郎であった。大立回りのすえ、彼はむろん悪人をほろぼすのである。--鴬城の天主閣から試みに遠目鏡で城中を見渡すと、幾組かの恋人たちが見えるであろう。松姫と彦四郎は言わずもがな新七郎と竹姫、八重と沢野、小百合とどこかの若侍--驚いたことに家老九郎右衛門と乳母浅岡が老いらくの恋を!「お父様、私もお嫁に行くウ」末娘の梅姫が駿河守を困らせるのであった。