船木源三郎とお雪とは幼馴染の恋仲であったが、お雪が父と弟を養わねばならぬために結婚をためらっているのを誤解した源三郎は立派な侍になってみかえしてやると彼女を罵って町を去った。やっと仕官はしたが、持って生まれた一本気から横暴な家老を殴りつけて脱藩した。有馬又十郎は上意討ちの命をうけて、源三郎のあとを追った。そして流れ流れて三年目、又十郎は源三郎の生まれ故郷の町へやって来て、屋台店の呑み屋をやっているお雪と知り合い好意を感じた。そのお雪は、源三郎がやはり町へ帰っていて土地の顔役亀六の用心棒になっていることを知って、驚くと同時に悲しんだ。狭い町のことで、又十郎はすぐに源三郎の所在を知ったが、憎まれ者の家老をなぐった源三郎の純粋な気持ちが判り、源三郎がお雪の恋人であったと知るだけに彼を討てないのであった。藩からは更に六人組の追討ちが到着し、宮の石段で源三郎を待ち伏せていると知った又十郎は、源三郎の身代わりとなって六人を斬り伏せた。傷ついた又十郎は、お雪、源三郎、そして宿の仲居で又十郎を想っているおうたの三人を前に、上意状を破り棄てこの町へ来てはじめて人間らしい三人を知ったよろこびを語り、お雪、おうたに又この町へ訪れる日を約して、町を立ち去った。