http://www.matsudafilm.com/matsuda/c_pages/c_e_25j.html(解説)大正十三年七月、軍使立石駒吉はマキノを東亜に合併させて「東亜キネマ」とし、この合併に不満を抱くスターを大量に引抜いて帝キネに入社させた。阪妻もその一人であったが、阪妻と犬猿の仲であった市川幡谷も帝キネ入りしていた事に腹を立て、雲隠れしてしまう。結局、半年後に元に戻り、不満の一つであった社名にもマキノの文字が復活して「東亜マキノ等持院」となった。本作品は阪妻の復帰第一作、「東亜マキノ等持院」第一回作品として公開されたものである。内容的にも、アメリカ活劇の手法を取り入れた野心作である。(略筋)“明和から天明にかけて、江戸の街中を悠然と闊歩した、影法師と呼ぶ痛快な盗賊があった。悪事は働いても、彼の遣り口に独特の皮肉と茶目気があり、洗練された鮮やかさと一種の小気味よさがあった”と、このタイトルから始まる物語は、悪を倒し弱きを助ける奇賊影法師の最も劇的色彩の濃厚なる一断片をくり広げる。慾心からでなく、人の物を盗むと云う泥棒技巧に興味を持つ流れ星の十太は、浅草観音境内でお転婆娘・お美江の簪を盗もうとした処を影法師に見つけられ、かくして十太は盲の権次同様、彼の腹心になる。ある夜、影法師はお栄と名乗る行倒れの女を助けるが、何時か互いに純な恋心を抱く。が、お栄に血迷う清見潟平馬や冷酷無情の目明し赤鬼の喜蔵、高利貸・矢口、剛直な浪人・樋口、影法師を慕うその娘・お里、お美江が彼を取り巻き、やがて新しき天地を求めて、影法師の刃が抜かれた…。