東海道上り特急列車の二等車に一隅、重役タイプの男の傍に美しい女が乗っている。彼女のナイロンの靴下につつまれた足が、汽車の震動で重役のズボンにさわる。食堂車で、作家が新聞記者相手に古来女の盗賊は美女にあらずと説いていると、傍に聞いていた青年刑事は抗議を申込んだ。彼はこの列車に美しい女掏摸が乗込んだのを大阪からつけて来ているのであった。折から例の二等車の重役が盗難にかかったとさわぎ出す。青年刑事はてっきり傍にいた美しい女掏摸の仕わざだとにらんで、彼女のあとを追って汽車をとびおりる。女掏摸は戦時中スパイの嫌疑で自殺した父の法要を営なうと弟分を連れて下田へ向かう途中であった。ところが、刑事の見込みちがいで、彼女のほうこそ老婆の掏摸から三万円の路金を掏られていることに気がついた。そこで熱海の宿では泊り合せた例の作家から、色仕掛で五万円せしめ、船で下田へ向かった。作家も刑事も同じ船で下田へ。国賊だといって一家を追い出した下田の親類一同の鼻をあかせてやろうとした大法要も、人の好いばかりの老人たちを前に張り合い抜けした女掏摸は、清算して人生の出直しをやろうと決心。追って来た青年刑事にやっとのことで現行を捕えてもらい彼に曳かれて東海道を大阪へ帰って行く。三等車の片隅に恋人同志のようにうれしそうに乗っている女掏摸と青年刑事。どうやら二人はお互いに好意を抱き合っているようである。