伊勢路きっての暴れん坊・鬼金が事件を起こし、その身柄を引き取って出たのは、いぶしの銀次という遊び人風の男。実は春の陽気に誘われて、江戸を彷徨い出た遠山の金さん。金さんと鬼金は桑名から浜松へ向かう二十石船に乗り込むと、その船上では講談師が世直し党と称する浪人群の不穏な動きを得意気に語る。この世直し党というのは、世相を攪乱するため、伝馬町を襲い、囚人たちを脱走させたりする不逞浪人の集まりで、その黒幕は西丸老中駒木筑後守と目され、奢侈禁止令を発布した大老水野越前守の政策に対する反対勢力でもあった。だが金さんの関心は、乗合い客の浪人風の男・大塚弦之丞の怪しい挙動にあった…。