欝蒼たる森林に覆われた山奥の松岡飯場に不敵な面魂の男が入って来た。渡り山稼人の寛次である。傍若無人の寛次は来る早々、樵夫の惣兵衛と喧嘩を始めたが、組頭の捨造は、酒と賭博は好きだが腕っこきの寛次に目をかけ彼を使うことにした。山は今、雨が降らないので原木を流し出せず困り切っていた。賃金を受取りに親方の所に行った帳場の津田は半分しか貰えずに帰って来た。飯場で景気直しの酒盛りが開かれた夜、寛次は、賄場で湯上りの鏡をのぞいている賄い女春子を不意に抱きしめた。だが「バクチ打ちは嫌い」という春子の言葉に寛次は狂ったように表へ飛出し木を伐り倒していた。そのころ、身売した妹の病気を知った古川は一人悩んでいた。古川を一途に思う賄いのユキは、それを聞いて有金全部を差出すが、ユキの行末を案ずる賄頭の四十後家おたきは、ユキに代って自分が氷年貯めた金を投出し、古川に山を下らせた。一方、寛次は、漸く入った作業員達の給金を残らずバクチで巻上げてしまった。作業員達の窮状を思う捨造は烈火の如く怒り、寛次の巻上げた金と自分の貯金を賭け勝負した。だが再び寛次が勝ち、泣崩れる春子を後に寛次は山を下った。その寛次を暗闇の山道に作業員達が待伏せて襲い寛次は谷底に突落された。その頃、おたきは賄場の釜の上に札束と貯金通帳を発見、その傍に「バクチは金輪際やめねえ」という寛次の書置があった。傷ついた寛次を春子がやっと探し求め、二人は初めて抱擁を交した。捨造とおたきが二人の仲人を買って出るため夫婦になろうと話している頃、外に激しく雨が降り出した。狂喜した作業員たちの叫びが山々にこだました。