火付盗賊改方に、近々日本橋の足袋問屋「大野屋」に盗みに入るという予告状が届いていた。差出人の名は「雨引文五郎」。文五郎(國村隼)はひとり働きの盗っ人で、隙間風の異名のとおり、音もなく出入りし、必ず証拠の名札を残していくことで有名だった。予告通り、大野屋に盗人が入った。だがそれは文五郎ではなく、急ぎ働き専門の落針の彦蔵(菅田俊)一味だった。火盗改めの活躍で一味は捕らえられたが、彦蔵らは逃げおおせてしまう。長谷川平蔵(中村吉右衛門)は、文五郎の密告と判断、盗人同士の仲間割れだと考えた。予告状の話は彦蔵の耳にも入った。激怒する彦蔵は文五郎の居場所を探し出す。手下の政次(土屋裕一)は以前文五郎と仕事をしていた犬神の権三郎(田中健)の女房、おしげ(賀来千香子)のところへ聞き込みに行った。「どこにいるかは知らない」というおしげ。だが、帰り際、権三郎がいきなり政次の前に現われ、「居場所を知りたいのか?」と聞いてきた。火盗改も文五郎の居場所を突き止めていた。文五郎の後を付ける平蔵たち。だが、その前に彦蔵、政次が現われ、文五郎を襲った。平蔵たちが割って入ると、文五郎は逃走してしまい、彦蔵だけが捕らえられた。火盗改の拷問にも口を割らない彦蔵。そこで平蔵は元盗人の舟形の宗平(伊東四朗)を呼び寄せる。宗平は彦蔵の顔を見て、中山道の追分あたりを荒らし回っていた落針の彦蔵だと平蔵に伝える。だが、なぜ文五郎を捜しているのかは見当がつかないという。「いつも見事な働きをする文五郎とゆっくり話がしてみたいのだが…。」平蔵は宗平にそう話した。その夜は役宅に泊まることになった宗平。だが、翌日、彦蔵は脱獄し、宗平の姿もなくなっていた。大騒ぎになる火盗改。宗平はなぜ彦蔵を逃がしたのか? 平蔵は裏切られたのだろうか…。