15年近く打ち込んだボクシングの世界で芽が出ないまま、網膜剥離で引退する事になった桃井環八(カンパチ)が、新たに出発したマンガの編集の世界で『あしたのジョー』の“ジョー”を目指す姿を描く。カンパチのモデルは、小学館の編集者・八巻和弘といわれている。マンガ好きの人間ならニヤリとするような実在の人物・事件が織り込まれているが、それを抜きにしても、それまであまり取り上げられる事のなかった1つの「業界」を描いた傑作である。「マンガ業界」そのものが主役と言えるため、次第に狂言回しとしての主人公・カンパチの影が薄くなっていった感は否めない。 現代の漫画業界そのままをリアルに描いたというわけではなく、物語上大幅に戯画化されている。